1. はじめに
最初に公開したのは下記のブログ記事です。以降こちらのページに引き継いで更新していきます。

この記事では、現代日本語(共通語)の特定の形式の意味・用法を調べる必要が出てきた(例:「明日休講だっけ」の「っけ」の意味・用法が知りたい)時に、さっとおおよそのことを調べることが可能で、それでもある程度はしっかりした記述がなされている本を紹介します。
すごくざっくり言うと,(『日本国語大辞典』を含む) 国語辞典以上、専門の論文以下の情報を調べるための本の紹介です。それでも、場合によっては下で紹介する本の記述が専門の論文で先行研究として言及されることもあります。
2. おすすめの本
2.1. グループ・ジャマシイ(編)『日本語文型辞典 改訂版』
1つ目のおすすめはグループ・ジャマシイ(編) (2023)『日本語文型辞典 改訂版』です。長く多くの人に愛用されてきたグループ・ジャマシイ(編) (1998)『教師と学習者のための日本語文型辞典』(くろしお出版)の改訂版です。
Title: 日本語文型辞典 改訂版
日本語に関する「文型辞典」はほかにもあるものの、この本を「文型辞典」と言うことが多い気がします。どちらかというと日本語教育畑の人におなじみの本という印象がありますが、カバーされている形式は幅広く、用例がたくさん挙がっていて文法研究の出発点としても非常に使いやすいです(詳細な分析がない場合にこれの記述を出発点にするなど)。
本体は辞典形式で言語表現を50音から引けるのに加えて、末尾にも50音索引,逆引き索引、意味・機能別項目索引(「可能」「命令」などから表現を探せる)が付いています。この辺りの構成は改訂前のものを引き継いでいます。
なお、改訂前の版にはいろいろな言語のバージョンが出ています。英語版より中国語、韓国語、ベトナム語、タイ語版等が先に出ているというのが日本語教育的背景を感じさせます。
2.2. 日本語記述文法研究会『現代日本語文法』シリーズ
2つ目のおすすめは日本語記述文法研究会『現代日本語文法』シリーズです。こちらは7冊セットのシリーズで、総索引が付いている第1巻を紹介しておきます。
Title: 現代日本語文法1 第1部総論 第2部形態論
この総索引に各巻で取り上げている言語表現が網羅されて、言語表現の形式から調べる場合は第1巻が便利です。各巻は「アスペクト」「モダリティ」などのトピック別になっているので日本語文法についてとりあえず基礎的な知識を得たい場合にも便利です。
『現代日本語文法』シリーズは学生がそろえるにはちょっと値段がきついと思いますが、少なくとも図書館など身近にはどこにあるか把握しておくと良いでしょう。
基本的には出発点
この2つはあくまでも出発点であって、調べた形式について詳細な分析を行う場合は、もちろん専門書や論文を探さないといけないということには注意してください。
おわりに:紹介の背景
とりあえずどの本がおすすめなのか知りたいという人はここは読まないでも問題ありません。
なんでこんな記事を書こうと思ったかというと、特定の形式の意味・用法の情報源として、卒業論文の審査や演習の授業でも一般的な国語辞典の情報をあげてくるケースがしばしばあることが前から気になっていたからです。
もちろん、研究のメイントピックになっている形式についてはきちんと専門書・論文を探せているケースがほとんどなのですが、メインではないけれども少し/幅広く言及する必要がある場合(例:終助詞「ね」がメインの分析対象で,その前に付く色々な形式の意味・用法に言及するような場合)等にそういう事態が発生するようです。
また、談話・文章研究で特定の形式にフォーカスしない場合(例:女性ファッション誌10誌1年分のコピーの分析)とかだと、その分さまざまな表現・形式の分類・分析をする必要があり、個々の言語表現に関する調査が手薄になることもあるようです。
もちろん卒業論文だと個々の形式についても詳細に分析した専門書・論文がないか探すことが必要になります。一方で場合によっては詳しい分析が存在しない形式もありますし、上記の本にも記述がなく結局国語辞典を引くこともあるのですが、やはりこれらを知らない/調べないのはもったいないと思ったので記事にしてみました。
言語学や日本語学だけはなく、哲学、文学、社会学等でも具体的な現代日本語の表現・形式の意味・用法に言及する必要が出てくるケース(あと言語学系の研究者でも日本語の研究には詳しくない場合とか)はあるように見受けられますので、そのような時にも使ってもらえると日本語の研究者としては嬉しいです。